頭痛は神経内科診療のなかで最も多い訴えの一つです。
特に急な頭痛は、脳に何かがおこったのでないか?と心配され救急外来を受診される方もいらっしゃいます。一方で、小さいころからあったので市販のお薬を使って医療機関を受診されない方も多いと聞いています。
急におこったものでない、頭を打ったなどの外傷のない、もしくは脳に明らかな異常が認められない慢性の頭痛には、大きくわけて片頭痛と緊張型頭痛があります。片頭痛にしても緊張型頭痛にしても個人によってその頭痛の性質と程度は様々です。また二つのタイプを両方お持ちの方もいらっしゃいます。それぞれの症状によって治療法が異なりますので、頭痛を改善し、家庭生活、学校生活やお仕事の質を上げるためには、できるだけ的確な診断をする必要があります。
片頭痛は緊張型頭痛より頻度が少ないものの、よく外来にこられる頭痛のタイプです。症状についての聞き取りが診断にとても参考になります。発作的に頭痛がおこりますので、その発作を速やかに改善させるために、鎮痛薬やトリプタン製剤が主に使われます。また発作が頻回な場合や周期的に頭痛発作がおこる方には予防薬の投与を行います。予防薬の選択肢は主に血管拡張薬、抗うつ薬、抗てんかん薬があり、薬剤を試しながら効果をみていきます。2022年に日本で処方可能となった抗CGRP抗体製剤(皮下注射)も効果的な予防として広く使用されています。頭痛発作がないときでも、気分がすぐれない、いつ頭痛がくるかわからないので外出できないなど、身体的・心理的に負担が多いのも片頭痛の特徴です。あきらめずに自分にとって最良の治療法をみつけることが、生活の質をよりよくすることに重要と考えます。
片頭痛より多いとされる緊張型頭痛は、まず鎮痛薬で疼痛を緩和することから治療をすすめます。筋の緊張を軽減する筋弛緩薬や抗不安薬も用いられます。個人にあった薬剤を選択していきます。また、長時間同じ姿勢をとることを避ける、適度な運動を心がける、リラックスする時間をもつなど緊張型頭痛を起こしにくくする生活習慣の改善も効果的です。
市販のお薬で頭痛が改善する方も多く、対処法はそれで問題ないと思いますが、頭痛の回数が多いとき、いつも内服している市販薬が効きにくくなったときなどは、その後のお薬の乱用にもつながります。また片頭痛や緊張型頭痛でない頭痛もありますので、症状がすっきりしないときは医療機関で相談することをおすすめします。
2024年8月31日
隼人メディカルクリニック