パーキンソン病とはふるえ、歩行困難、動作が緩慢になるなどの運動の症状を主とする疾患です。
患者数は近年の高齢化にともない増加傾向にあります。有病率(パーキンソン病と診断された方の全人口に対する割合)は0.3%、つまり全人口の1000人に3人がパーキンソン病をもっています。高齢ほど有病率が高く、65歳以上では100人に1人、80歳以上では100人に3人がパーキンソ病とされています。1年間に全人口10万人あたり8~18人の割合で発症するということですが、特に65歳以上では10万人あたり約160人と若い人口に比較して発症するリスクは大きくなります。
原因はよくわかっていません。メカニズムとしては脳内にアルファシヌクレインというタンパク質が過剰に蓄積し、脳の様々な部位に作用するドパミンという神経伝達物質を作る細胞が減ることによっておこる病気です。
運動症状は、手や足がふるえる、動作が遅い、筋が硬くなる、歩行しにくい、転びやすい、声が小さくなる、字が書きにくい、進行期には飲み込みにくいなどがあります。また運動症状の他に、運動に関係のない症状(非運動症状)も頻繁におこります。非運動症状は多岐にわたり、うつ、不安、幻覚、妄想などの精神症状、睡眠障害、立ちくらみ、発汗過多、頻尿、便秘といった自律神経症状、においがしにくい、手足の冷感、むくみ、疼痛、よだれが代表的な症状です。ときには運動症状よりも非運動症状が目立ち、生活に大きく影響することもあります。またパーキンソン病の症状には個人差があり、症状の進み方も様々です。
治療は薬物治療が主になります。また運動の継続や自律神経症状の悪化予防のための、よりよい生活習慣の維持が理想的です。治療薬には効果的な薬剤が複数あります。いわゆるL-ドパは体内に不足したドパミンを補うもので比較的効果が速やかです。他にも作用の異なる薬剤の選択肢は少なくありません。おおよその治療の方向性がありますが、患者様の症状や病期、副作用、相互作用などを考慮し、適した薬剤とその投与量を決定します。
治療前には診断が必要ですが、典型的な運動症状を呈した場合は、L-ドパか他の薬剤を投与することで症状の改善を確認し、それによって診断することもあります。しかし、非運動症状が目立ち運動症状が軽症の時期や、経過が典型的でない場合などは、精密検査をすすめられることもあります。MIBG心筋シンチグラフィーとDaTスキャン(ドパミントランスポーターシンチグラフィー)が鑑別、診断に有用です。頭部MRI検査において鑑別がつきやすくなることもあります。
パーキンソン病の症状と似ていても、他の疾患の可能性もありますので、専門的な診察が必要です。もしご自分やご家族の症状がパーキンソン病かなと思われましたら、脳神経内科を受診することをおすすめします。患者様、ご家族にとって家庭生活、仕事、社会活動に大きくかかわる疾患です。その方にあった治療を選択するためには正しい診断が重要になります。
当院では、まず症状や経過についてお話をうかがい神経内科学的な診察をさせていただきます。より詳細な検査が必要な場合は設備の整った医療機関へ受診をお願いするなどご協力いただくこともあります。パーキンソン病診療ガイドラインをもとにその方にあった治療選択と環境整備を提案させていただきます。
2024年8月31日
隼人メディカルクリニック